ガスクロマトグラフィー入門編 GC・GC/MS基礎講座
クロマトグラフィーとは
クロマトグラフィー(クロマトグラフ法)とは、各種の固体または液体を固定相(Stationary phase)とし、その一端より適当な移動相(Moving phase)とともに混合物試料を移動させ、各成分の固定相への吸着性、分配係数の違いにもとづく移動速度の大小によって各成分を分離する方法である。この方法は多成分系混合物の分析には最も重要な手段である。
 
ガスクロマトグラフィーとは
ガスクロマトグラフィーは、その名の通り移動層に 「気体(ガス)」を使うとういうことが大きな特徴で、この気体にはヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンなどの不活性な気体を用いられる。 これはキャリヤーガスとよばれ、飛び回わりながらある一定の方向へ移動している。
試料はガスにのって飛び回りぶつかり合ううちに、いつしか固定相もぐりこんだりして移動つづける。物質よって移動の速度や挙動が異なってくる、固定相に入り込んでは、また移動相へ戻りながら分離していく。
固定相には、固体や液体が用いられるが、一般的に固体の場合、粒が一定で、砕けにくく大きな表面積を持つことが求められる。 これらを につめるた物をパックドカラムといい、もしくはに薄く塗った物をキャピラリーカラムといい、その中にガスと試料を流し入れる。
試料は移動相と同じ気体(ガス状)である。つねに気体状態を保つ必要があるため、ガスクロマトグラフ内を高温にし気化させておく必要がある。そのため、試料の条件としては揮発性が高く熱に対して安定でなくてはいけない。そのため、難揮発性の試料や、熱に不安定な試料はこの分析法には適さないため適当な前処理(誘導体化)を行なう必要がある。また試料(溶質)の沸点が分離の基本的な因子になっているので、溶出順序は通常沸点順となる。
 
カラムの性質
 GCで使用されるカラムには、パックドカラムとキャピラリーカラムの2種類があります。
 最近ではカラムシェアの80%がキャピラリーカラムなってきていますが、それぞれの長所に応じた使い分けが必要です。
パックドカラム
 
液相をコーティングした担体(クロモソルブ等)をガラス又はステンレス管内に充填したものです。
 
液相量が多いので、サンプル負荷量が大きい。
 
充填剤・液相の種類が多く、サンプルによって最適な選択をすることが出来る。
 
内径が太いため、ピークがブロードになる。
 
充填剤の間をサンプルが通過することで、多流路拡散がありピークがブロードになる。
 
充填されているため、圧力損失が大きく長く出来ない。
 
キャピラリーカラム
 
フューズトシリカチューブの内壁に液相(固定相)が塗布されています。サンプルはこの液相との相互作用(分配又は吸着)で分離されます。
 
充填剤が無く、内径が細い為サンプルの拡散少なく、シャープなピークが得られ分離、定量性が良い。
 
内径が細いため、カラム内での温度分布が無くシャープなピークが得られる。
 
不活性化したフューズドシリカチューブを用いているので、サンプルの吸着が少ない。
 
液相量が少ないので、サンプル導入量が多いと過負荷となりきれいなピーク形状がえらない。
 
液相の種類が、パックドカラムに比べ少ない。

 
 
注入口
 

 
1 スプリット法
キャピラリーカラムで最も一般的に用いられている、注入法です。
キャピラリーカラムは負荷量が小さい為注入口内部で気化したサンプルの大部分は捨てられ一部分だけがカラムに導入されます。
サンプルの大部分が捨てられるため、サンプルの組成を正しくカラムにできるとは限りません。
特に沸点範囲の広いサンプルでは注意が必要です。
また、加熱されているため熱に不安定な化合物には不向きです。
 
2 スプリットレス法
一般的にはスプリット/スプリットレス注入口になっていてモードの切り替えで、上のスプリット法、スプリットレス法が使い分けられます。
スプリット法と異なり、サンプル導入時はスプリットを行わず、全量をカラムに導入します。
微量サンプル等の分析で用いられることが多いです。
但し、サンプル全量を導入するため導入時間が長くなりそのままではピーク幅が広くなります。
一般的にはサンプルを溶解している溶媒温度以下にカラム温度を下げることで、カラム先端で一旦溶媒を液化させ、そこにサンプルを再溶解させることでシャープなピークを得ることが出来ます。
 
3 クールオンカラム法
シリンジから直接液体のままサンプルをカラムに導入します。
注入の際注入口は室温になっている為、熱に不安定な化合物の分析に用いられます。
またサンプルの全量をカラムに導入できるので最もサンプル組成を正しくカラムに導入できる注入法です。
サンプルの沸点範囲が広い場合も用いられます。
 
 

検出器
通常の分析で得られる情報は、物質のカラム保持時間のみである。クロマトグラフのピークと言うものは、カラムから分離されて検出器にきた時に温度変化であったり、電気的変化であったりする。それの強さ等を電気的信号に変換し変動が大きければ大きなピークに小さければ小さなピークに変わる。検出器によっては単に物質の多さに比例するのではなく特定の分子又は元素の多さに比例するものもある。物質の持つ熱伝導度等に比例するものもある。同じ濃度で分析してもピークの大きさに違いがあるのはそのような要素もある。
 

 

水素炎イオン化検出器(FID -Flame ionization detecto- )
ガスクロマトグラフの高感度検出器として広く利用されている鋭敏な検出器で、温度変化に影響されず、水や二硫化酸素以外はほとんどの成分を検出することが出来る。一般に炭化水素系化合物の定量、大気汚染の測定などに用いられる。
 
カラムから流出してくるキャリアーガスに水素ガスを一定割合で混合しさらに一定の空気を混合し燃焼させる。 キャリア-ガスだけの時にはほとんど変化はないが、ガスに有機物質が混入していると二酸化炭素が生じ、検出器の中でイオン化され、有機物質の量に応じた電流が流れる。このとき生じたイオン量に応じたシグナルを高度の増幅し記録する。
 

熱伝導度型検出器(TCD -Thermal conductivity detector-)
ガスクロマトグラフの初期から最も多く使用されている検出器で、 キャリアガス以外の成分を全て検出することができる万能型だが、 感度はあまり高くないので充填カラムをよく使用する。 熱伝導度の差を利用しているので差が少ない試料には使いにくい。
 
タングステンフィラメント(白金線)、サーミスター、金属合金線などを並列に配置し、 適当な電流を流し、加熱する。(通常電流は大きいほど検出の感度が高い。)一方に純粋なキャリヤーガス、もう一方にサンプルを注入したカラムより流出したガスを流す。 加熱されたフィラメントはガスに触れると熱伝導により一定の割合で熱が奪われる。 このとき一定の流量の純粋なキャリアーガス中ではある一定の温度が保たれるが、 試料成分が混ざって出てくるガスは熱伝導度が純粋なものとは異なり、 フィラメントの温度が変化し、その抵抗値も変化する。 この抵抗値の変化をホイートストンブリッジ(電気抵抗測定器 Wheatstone bridge)で測定し、 不均衡な状態をつりあわせるために必要な電流を測定し記録する。
 
窒素リン検出器(NPD)
NPD(別名FTD)は、有機窒素化合物(一つの分子に炭素Cと窒素Nがある化合物、たとえばHCN)やリン化合物(たとえばPH3)に高い感度を示します。リン化合物に対しては後述のFPDの方が選択性の点でベターであり、NPDは主として窒素化合物の検出によく用いられます。
構造的にはFIDによく似ていますが、ジェットの上部にルビジウム塩(RbSO4)を付着させた白金コイルがあり、電流を流して600℃~800℃に加熱しておきます。
ジェットからはFIDと同じようにキャリアガスと水素が流れてきます。水素の流量は3~5ml/minで、FIDの40ml/minに比べるで約1/10の少量です。
この水素はジェットでFIDのようなフレームをつくるのではなく、ルビジウム塩のビーズのまわりにボヤーとしたプラズマ状の雰囲気を作ります(と言われています。誰も見た人はいませんが..)。
この中に炭素(C)と結合した窒素(N)、即ち?CN化合物が入ってきますと、下記のようなイオン化が起こり、イオン電流が得られます。
炭素と結合していない窒素(たとえばNH3:アンモニア)などは、この検出器で応答はありません。
しかし、NH3はキャリアガスに有機化合物(一般には低級炭化水素)を混合することにより、選択的高感度測定が可能になります。
 
電子捕獲型検出器(ECD -Electron capture detector-)
感度が高いが、電子と結合するような特定成分(ハロゲン化合物、ニトロ化合物、燐、鉛化合物など)の親電子物質に対して極めて高い感度を示す検出器。
農薬や、PCB等の残留分析、大気中に含まれるのフロンに用いられることが多い。
高速の電子ある放射線 β線を内蔵し、そこをキャリアーガスが通ると、電子を吸収してイオン化し一定の電流が発生する。
これをベースラインとし、さらに混合物質が入ると、電子はさらに吸収され、電子数が減少、電流も減少する。 この電流の減少を記録する。
 
保持時間(RT-Retention time-)
ある一定の温度とガス流量のもとで試料を注入し、それが検出器で検出されるまでの時間な物質により固有の時間を持っている。 これを保持時間(リテンションタイム)と呼ぶ。クロマトグラムにはこの時間が山なりのピークとなって表れる。しかしRTはおおよその信頼がおける程度であり、同一成分だということを確証するものではない。 その値は測定条件、カラムの状態等に大きく左右されるため、どれだけ厳密に条件を再現できるかということが最も重要になる。
 
予想物質の添加
ガスクロマトグラフィーではまったくの未知試料が分析されるということはまれである。臭い、沸点、化学反応、経験データなどにより、 対象となる物質に予め見当をつけ、測定することによってより正確な確証を得ることができる。
 
混合物の数
試料のなかにはいくつ物質が含まれているかということも重要な判断材料になる。 クロマトグラムのピークの数が最小の数を表す。物質の純度を測定するような場合にはピークか表れないことが純粋物質ということの確証にもなる。
 
混合物の定量分析
ガスクロマトグラフィーでは記録計に出現するピークの面積により、物質の量が測定できる。
面積を比較することによって、量比がわかる。 また測定を正確に行えば、誤差の少ない定量が実現できるため、定量の目的で使われる場合もある。
 
ガスクロマトグラフとスペクトル装置との組み合わせ
ガスクロマトグラフィーは分離手段として優れているが、分子の成分構造の情報はほとんど得られない。 試料をガスシリンジで注入してからピークの頂点が現れるまでの時間(保持時間:RT)に頼っているため確実な推定はできない。
このあいまいさをカバーするために、分離した結果を、他の機械でも分析する必要が生まれた。これらの機器をガスクロマトグラフィーと直結することによって、より正確に物質を特定することができる。
 
GC/MS(Gas chromatograph-Mass spectrometer)
質量分析計との組み合わせ。 分離分析に優れるが定性能力に欠けるガスクロマトグラフ(GC)と、定性能力には優れるが分離能力に欠ける質量分析計(MS)とを、相互で補い一体化された複合分析装置。溶出された成分を直接またはキャリヤーガスをのぞき濃縮してMSへ導きイオン化させ、生成された分子イオンおよび分解イオンのマススペクトルを測定する。 マススペクトルは化合物の分子量はもとより、その構造について大量の情報を含んでいる。 これらのデータからマスクロマトグラフィー(定性分析)、マスフラグメントグラフィー(定量分析)などが行える。
 

 

検 出 器 の 一 覧